非営利団体Current AIは、フランス政府やフォード財団から4億ドルの資金を調達し、巨大テック企業に支配されない「AI版ウェブ」の構築に着手した。これは、AIを公共インフラとして再定義し、言語や文化の多様性を守るための挑戦である。
現在の生成AI開発は、OpenAIやGoogleといったシリコンバレーの巨大テック企業が主導しており、そのモデルは英語圏のデータや価値観に偏重していると指摘されている。Current AIは、この現状に対し、AIを特定の企業の所有物ではなく、誰にでも開かれた公共インフラとして再定義することを試みている。同団体は、地域コミュニティが自らのデータと文化的主権を保持する「AI版ウェブ」の実現を目指すものである。
Current AIは、インド政府のAI言語部門と連携し、インターネット環境がない地域でも22の言語を処理可能なオフライン端末「Suno Sutra」を開発した。TechCrunchの報道によれば、同団体はケニア、レバノン、ブラジルの先住民コミュニティにおける言語・文化保護プロジェクトに320万ドルの助成を行っている。さらに、東京のSakana AIと提携し、日本語やグローバルサウスの言語に最適化されたオープンソースのAIスタック構築を進めており、効率と規模を追求する既存のテック業界のパラダイムへの対抗軸を形成している。
Current AIが提唱する「主権あるAI」は、AIを単なるビジネスツールではなく、人類の知識や記憶を継承する文化的な基盤として位置づける。これにより、デジタル社会における情報の生成、利用、管理のあり方が根本的に再定義される可能性がある。特定の企業に依存しないAIの選択肢が増えることで、多様な文化や言語がデジタル空間で保護され、それぞれのコミュニティのニーズに応じたAIの恩恵が享受される社会の実現が期待される。
Current AIは計4億ドルの資金を調達したが、世界規模のAIインフラ構築には莫大な計算リソースと長期的な運用コストが必要であり、その持続可能性が最大の課題である。また、オープンソース化されたAIモデルの安全性確保と悪用防止のためのガバナンス体制の構築も重要な論点となる。巨大テック企業が持つ圧倒的な資金力と技術力に対し、非営利の枠組みでどの程度の競争力を維持できるか、今後の動向が注目される。